RIZINデュアルマストシステムとは|従来との違いを整理

2026年3月、RIZINは新たな判定基準「デュアルマストシステム」を導入した。
RIZINはこの新方式を2026年3月7日の「RIZIN.52」から実施しており、世界標準の10ポイント・ラウンドマストと、RIZIN独自のトータル評価を組み合わせた二層式の判定システムとして説明している。
従来、RIZINはPRIDE、DREAMから続くトータルマストの考え方を採用してきた。
RIZIN広報部長の笹原圭一氏は、PRIDEが1997年に立ち上がって以来この方式が用いられてきた一方で、「トータルマストは本当に適切なのか」という議論がRIZIN発足当初から続いていたと説明している。
デュアルマストシステムとは何か
デュアルマストシステムは、第一基準と第二基準の二段階で勝敗を決める方式だ。
第一基準では、各ラウンドを10点法で採点する「10ポイント・ラウンドマスト」を用いる。
各ラウンドの採点は、単なる見栄えや一瞬の動きではなく、ラウンド終了時点で相手の戦闘能力をどれだけ低下させたかという「結果の差(GAP)」をもとに判断される。
そして、全ラウンドの合計点が同点になった場合のみ、第二基準として「3Dトータルマスト」が適用される。
ここでいう3Dは、Damage、Dominance、Durationの3項目を指す。
Damageは重大なダメージ、または効果的な累積ダメージ、Dominanceはフィニッシュに近づくための戦術的優位性、Durationは有効な攻勢を維持した時間を意味する。
配分値は、Damageが重大なダメージで10点、効果的な累積ダメージで5点、Dominanceが3点、Durationが2点とされている。
RIZIN側はこの設計によって、単なるポジションキープではなく、相手に明確なダメージを与え、フィニッシュにつながる攻勢をより重視する考え方を打ち出している。
さらに、第二基準の3Dトータルマストでも並んだ場合は、より上位の評価項目を比較するタイブレークで勝者を決める。
JMOCの説明では、この仕組みによって最終的に必ず勝者を決定する設計になっている。
なぜRIZINは判定方式を変えたのか
RIZINがこの方式を導入した背景には、世界的に普及しているラウンドマストの分かりやすさを取り入れつつ、RIZINが重視してきた「フィニッシュを狙う姿勢」を残したいという狙いがある。
RIZINマッチメーカーの柏木信吾氏は、一般的なラウンドマストでは2ラウンドを先取した選手が最終ラウンドを流す発想になりやすい一方、RIZINとしてはあくまでポイントゲームではなく、KOや一本を狙う姿勢を重視したいと説明している。
笹原氏はこの新方式を「世界初の試み」と表現している。
ただし、同じ説明の中でJMOC側は、過去にDEEPでもラウンド採点とトータル評価を組み合わせた運用があったと述べているため、厳密には「RIZINが世界初の試みとして打ち出している新方式」と表現するのが正確だろう。
従来のトータルマストとの違い
従来のRIZINルールでは、試合全体を通じてどちらが優勢だったかを総合的に判断するトータルマストが採用されていた。
判断材料としては、ダメージ、アグレッシブネス、ジェネラルシップの3要素が重視され、ラウンドごとではなく15分全体を見て勝敗を決める考え方だった。
これに対してデュアルマストシステムでは、まず各ラウンドを10点法で評価し、合計点で差がつかなかった場合に限って試合全体の3D評価に移る。
つまり、観客や選手にとってはラウンドごとの流れが見えやすくなりつつ、RIZINが大切にしてきた「試合全体を通じたフィニッシュ志向」も残す構造になっている。
RIZIN.52での初適用はどうだったのか
デュアルマストシステムが最初に適用されたのは、2026年3月7日に有明アリーナで開催されたRIZIN.52だ。
RIZIN公式の試合結果によると、この大会は全12試合中、判定決着が2試合、残る10試合がTKOまたはサブミッションによる決着だった。
数字にするとフィニッシュ率は約83.3%となる。
もっとも、この高いフィニッシュ率だけをもって、新判定方式が直ちに効果を発揮したと断定することはできない。
ただ、RIZINが掲げた「ポイントゲームではなく、最後までKO・一本を狙う姿勢を重視する」という方針と重なる結果になったことは確かだ。
今後の注目点
この新システムでは、Damageが最も重く評価されるため、相手に実質的なダメージを与える攻撃や、フィニッシュに直結する攻勢の価値がさらに高まる。
一方で、ラウンドごとの採点と試合全体の3D評価がどう運用され、実際の判定にどこまで一貫性が出るのかは、今後の大会を通じて見えてくる部分も大きい。
また、JMOCはRIZIN.52からインスタントリプレイ運用の見直しも進めており、判定やレフェリングの透明性向上に取り組んでいる。
デュアルマストシステムが今後どのように定着し、RIZINらしい試合内容とどう結びついていくのかは、引き続き注目される。
まとめ
デュアルマストシステムは、世界標準の10ポイント・ラウンドマストと、RIZIN独自の3Dトータルマストを組み合わせた二層式の判定方式だ。
ラウンドごとの分かりやすさを取り入れながら、RIZINが重視してきたフィニッシュ志向も残そうとする、意欲的なルール改定と言える。
RIZIN.52では全12試合中10試合がフィニッシュ決着となり、導入初戦としてインパクトのある大会になった。
今後この判定方式がどのように機能し、選手の戦い方やファンの見え方をどう変えていくのか、引き続き注目したい。
参考・出典
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