AJ・マッキーは本当にシェイドゥラエフ戦を“熱望”したのか PFL San Diego試合後発言を検証

日本のメディアで出た「シェイドゥラエフ戦熱望」報道
PFL San Diegoのメインイベントで、AJ・マッキーがサラマット・イスブラエフに判定勝ちを収めた。
イスブラエフは試合前まで10戦無敗。
しかも10勝すべてがフィニッシュという危険な相手だった。
しかしマッキーは、打撃のスピードに苦しむ場面こそありながら、試合がグラウンドに移ると主導権を握った。
テイクダウン、トップコントロール、グラウンドでの攻撃。
3ラウンドを通してマッキーが試合を支配し、判定は3者とも30-27。
内容としても完勝といえる勝利だった。
その試合後、日本のメディアでは、マッキーがRIZINフェザー級王者ラジャブアリ・シェイドゥラエフとの対戦を“熱望”した、という趣旨の記事が出ている。
では、マッキーは本当にシェイドゥラエフ戦を名指しで望んだのか。
インタビュー内容を確認すると、そこには少し注意が必要だ。
確認できるのは「日本での試合」と「ベルト統一」への前向きな姿勢
試合後インタビューでは、記者からマッキーの知名度やキャリアについて質問が出ている。
その中で、UFC所属ではないにもかかわらず、フェザー級屈指の存在として名前が知られていること、RIZINや日本で戦っても、世界中どこで戦っても「AJ・マッキー」の名前は認知されている、という文脈が出ていた。
つまり、インタビュー全体の流れとして、RIZINや日本という話題はたしかに存在していた。
その後、記者がマッキーの過去のクロスプロモーション的な取り組みや、オンライン上での関心に触れた。
これを受けて、マッキーはこう答えている。
> やろう。
俺はベルト統一に興味がある。
最高の中の最高と試すことに興味がある。
そして日本は、子どもの頃にPRIDEを見ていた時代から、自分にとって戦うのが大好きな場所の一つだ。
この発言から分かるのは、マッキーが日本での試合、ベルト統一、そして強豪との対戦に前向きだったということだ。
一方で、インタビュー内容を確認した限り、マッキー本人が自発的に「シェイドゥラエフ」と名指しした場面は確認できない。
「熱望」と言い切るには一段飛躍がある
マッキーは確かに「やろう」と答えている。
さらに「ベルト統一に興味がある」「最高の中の最高と戦いたい」とも語っている。
もし記者の質問が、RIZINフェザー級王者シェイドゥラエフとの対戦を念頭に置いたものだったのであれば、マッキーがその対戦に前向きに応じた、とは言える。
しかし、「マッキーがシェイドゥラエフ戦を熱望した」と表現すると、読者には別の印象を与える。
「熱望」と聞けば、マッキーが自分からシェイドゥラエフの名前を出し、明確に対戦要求したように受け取られやすい。
だが、今回確認できる発言上では、少なくともマッキー本人がシェイドゥラエフを名指ししたとは言えない。
マッキーが語った日本への強い愛着
ただし、マッキーが日本での試合に強い関心を持っていることは間違いない。
マッキーは、日本を「自分にとって戦うのが大好きな場所の一つ」と表現した。
理由として挙げたのは、子どもの頃に見ていたPRIDEの記憶だ。
さらに、日本のルールセットについても言及している。
マッキーはサッカーボールキックを含むルールセットに触れ、それを「現代の剣闘士のような戦い」と表現した。
技術的にポイントを取る試合も理解しているとしながら、マッキーはダメージが試合を決めるという感覚を重視している。
日本のファンについても、一本を狙えば拍手し、一本から逃げても拍手する、競技のあらゆる局面を理解している観客だと高く評価していた。
この部分だけを見ても、マッキーが日本の格闘技文化、PRIDE的な空気、そしてRIZINにつながるルールや観客の雰囲気に特別な感情を持っていることは伝わってくる。
イスブラエフ戦については「立ち技では苦戦、グラウンドで支配」
今回のインタビューで、マッキーは日本の話だけをしていたわけではない。
試合内容については、立ち上がりが少し遅かったと振り返った。
イスブラエフについては「小さかったが速かった」と評価し、特に立ち技のスピードは想定以上だったと認めている。
また、今回の減量が厳しかったことも明かした。
マッキーによれば、2日で約20ポンドを落としたという。
キャンプ中から数ポンド重い状態が続き、食事の分け方にも課題があったと話していた。
それでも、グラウンドに持ち込んでからは感触が変わった。
マッキーは、相手のグラップリングとレスリングを感じた時に、「ここが自分の戦いたい場所だ」と判断したという。
立ち技では思うように組み立てられなかったが、テイクダウン後はトップを取り、相手を疲弊させる展開に持ち込んだ。
> 倒して、溺れさせる。
マッキーは試合をそう表現した。
イスブラエフは10戦無敗で、全勝フィニッシュという勢いを持っていたが、マッキーは経験と総合力でその勢いを止めた。
「世界最高の145ポンド」への自負
インタビューでは、自身が世界最高の145ポンドファイターだという自負も語っている。
PFLのCEOが「AJは世界最高の145ポンドファイターだと思う」と話していたことを振られると、マッキーは迷わず肯定した。
マッキーは、自分の中ではフェザー級で負けたことがないという認識を示し、PFLには地球上で最も危険な145ポンドファイターがいると語った。
また、アレクサンダー・シャブリーが145ポンドへ落とす可能性について問われた場面では、マッキーは「誰とでも戦う」と答えた。
シャブリーとは互いに言葉を交わすことはあっても、顔を合わせればリスペクトがあるとも話している。
ここでも、マッキーの発言は一貫している。
特定の一人に執着しているというより、自分が世界最高であることを証明するために、強い相手、王者、ベルト統一につながる試合を求めているという構図だ。
結論 日本には前向き、ただし名指し要求とは言い切れない
AJ・マッキーは、PFL San Diego試合後のインタビューで、日本での試合に強い関心を示した。
「やろう」
「ベルト統一に興味がある」
「最高の中の最高と試したい」
「日本は戦うのが大好きな場所」
これらの発言は確かにあった。
RIZINや日本という文脈も、インタビュー全体の中には存在している。
一方で、インタビュー内容を確認した限り、マッキー本人がシェイドゥラエフの名前を出した場面は確認できない。
9月のRIZINでシェイドゥラエフのビッグマッチが噂される中、日本のメディアがこの発言を「シェイドゥラエフ戦への前向きな姿勢」と受け取ったこと自体は理解できる。
マッキーは実際に、日本での試合、ベルト統一、そして「最高の相手」と戦うことに強い関心を示していた。
今回確認できるのは、マッキーが日本での試合とベルト統一に前向きだったということ。
そして、その文脈の先にシェイドゥラエフ戦を想像する余地はあるということだ。
だが、少なくとも確認できる発言上では、マッキーがシェイドゥラエフを名指しで要求したわけではない。


