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5人で戦う寝技の団体戦「QUINTET」とは 桜庭和志が生み出した勝ち抜きグラップリング

EasyFight運営
5人で戦う寝技の団体戦「QUINTET」とは 桜庭和志が生み出した勝ち抜きグラップリング

柔術やグラップリングの大会と聞くと、同じ階級の選手が1対1で戦い、ポイントや判定によって勝敗を決める形式を想像する人が多いかもしれない。

しかし、QUINTETは、一般的な個人トーナメントとは大きく異なる。

5人で一つのチームを組み、相手チームの5人をすべてマットから退場させるまで戦う。
勝者はマットに残り、次の相手を迎え撃つ。
一本が決まらなければ、たとえ試合を優勢に進めていても原則として引き分けとなり、両者が退場する。
ただし、大将同士の最終戦とシングルマッチでは判定が行われる。

QUINTETは、個人競技として知られる寝技を「団体戦」に変えた、日本発のプロ・グラップリングイベントだ。

桜庭和志が2018年に立ち上げた団体

QUINTETを立ち上げたのは、PRIDEなどで活躍し、「グレイシー・ハンター」と呼ばれた桜庭和志である。

旗揚げ大会の「QUINTET.1」は2018年4月11日、東京・両国国技館で開催された。

桜庭自身が率いるチームのほか、柔術、柔道、サンボなど異なる競技を背景に持つ選手やチームが参加。
4チームによる1日トーナメントで初代王者を争った。

試合が行われるのはリングでもケージでもなく、12メートル四方のグラップリングマット。
パンチやキックはなく、絞め技や関節技による一本を目指す。

その後は日本だけでなく米国やドバイでも大会を開催。
世界的な柔術家、グラップラー、柔道家、レスラーに加え、MMAで知られる選手たちも参加してきた。

最大の特徴は「5対5の勝ち抜き戦」

QUINTETを理解するうえで、最も重要なのが勝ち抜き方式だ。

各チームは5人で構成され、1番手から5番手までの出場順を決める。
最後の選手が大将となる。
最初の選手同士が戦い、一本を取った選手はそのままマットに残って、相手チームの次の選手と連続して戦う。

理論上は、一人で相手チームの5人全員を一本で下すこともできる。

反対に、試合時間内に一本が決まらなければ原則として引き分けとなり、両者とも退場する。
自分より強い相手を倒せなくても、引き分けに持ち込んで一緒に退場させれば、チームの勝利に貢献できる。

ここが個人戦とは大きく違う。

攻撃力の高い選手を前に置いて一気に人数を減らすのか。
守備力の高い選手をぶつけて相手のエースを引き分けに持ち込むのか。
誰をどの順番で出すかによって、試合全体の流れが変わる。

寝技の技術だけでなく、チーム編成や出場順を決める戦略も見どころになる。

ポイントではなく一本を重視

一般的なブラジリアン柔術では、テイクダウン、パスガード、マウント、バックポジションなどにポイントが与えられる。

QUINTETの団体戦には、通常の試合を決めるためのポイント判定がない。

勝利の基本は、関節技や絞め技によるサブミッション、失神、レフェリーストップ、または反則による失格である。
規定時間まで一本が決まらなければ引き分けとなる。

試合時間は原則8分。
体重差がある場合は4分となり、その基準はレギュラー部門で20キロ以上、ライト部門で10キロ以上、女子レギュラー部門で7キロ以上と定められている。
いずれの場合も、軽い側の選手には8分を選択する権利がある。

ただし、大将同士の最終戦やシングルマッチでは判定が行われる。
まず両者の「指導」の数を比べ、次にチーム全体の指導数を比較し、それでも並べば旗判定で勝敗を決める。

通常のポイントリードを守って時間切れを狙う戦い方はできないため、選手には常に一本を狙う姿勢が求められる。
観客にとっても「どちらが相手を極めるか」という勝負の目的が分かりやすい。

体重差もチーム戦術になる

QUINTETのチーム戦では、通常の柔術大会のように選手一人ひとりを同じ体重階級へ分ける方式をとらない。

その代わり、5人の総体重に上限が設けられている。
レギュラー部門は合計430キロ以内、ライト級部門は360キロ以内、女子レギュラー部門は280キロ以内となっている。

つまり、重量級の選手を入れれば、その分だけほかのメンバーを軽くしなければならない。

全員を同じような体格でそろえるチームもあれば、100キロを超える大型選手と軽量級の技術者を組み合わせるチームもある。

小柄な選手が大型選手の攻撃をしのぎ、引き分けに持ち込んで相手とともに退場する。
あるいは重量級の選手が相手を連続で倒していく。
個人の体重差が、そのままチーム編成の駆け引きにつながっている。

消極的な試合を防ぐ「指導」

一本決着を掲げても、選手が守りに徹すれば試合は動かなくなる。

そのためQUINTETでは、ポジションを維持するだけで攻撃しない行為や、テイクダウンを狙わず逃げ続ける行為などに「指導」が与えられる。

指導を受けると、相手がマウント、サイド、サイドバック、ニーオンベリーの中から有利な再開位置を選ぶことができる。

単なる注意ではなく、すぐに一本へつながりかねない大きな罰則である。
指導3回で失格となるため、守るだけの選手には厳しいルールだ。

また、2025年のQUINTET.5からはヒールフックも全面的に解禁された。
国際的なグラップリングの技術発展に合わせ、QUINTETのルールも変化を続けている。

柔術家だけの大会ではない

QUINTETには、ブラジリアン柔術の選手だけが出場するわけではない。

これまでに柔道家、レスラー、サンボ選手、プロレスラー、MMAファイターなど、さまざまな競技の選手が参加してきた。

クレイグ・ジョーンズ率いるB-Team、エディ・ブラボーの10th Planet、国内のCARPE DIEMなど、世界的なグラップリングチームも参戦。
UFC、PRIDE、WEC、Strikeforceの名前を冠したチームが争った「QUINTET ULTRA」も開催された。

選手の競技背景が違えば、狙う技や試合の進め方も変わる。

柔術家のガードワークに、レスラーのテイクダウン、柔道家が投げから有利なポジションへつなぐ動き、MMA選手のトップコントロールがぶつかる。
異なる寝技文化を同じルールで比較できることも、QUINTETの魅力である。

個人戦にはない「仲間のための戦い」

QUINTETでは、個人として負けないことだけが、常に最善とは限らない。

前の選手が何人抜いたのか、チームにあと何人残っているのか、相手の大将までどれだけ距離があるのかによって、求められる戦い方が変わる。

一本を取らなければチームが敗退する場面もあれば、自分が引き分ければ仲間に勝負を託せる場面もある。

普段は個人の勝敗を追う柔術やグラップリングに、駅伝や団体柔道のような物語が加わる。
一本を取った選手をチームメートが迎え、次の相手へ送り出す光景もQUINTETならではだ。

寝技の細かな技術が分からなくても、「残り何人か」「次は誰が出るのか」という状況を追うだけで楽しめる。

須藤元気が新プロデューサーに就任

QUINTETは2026年6月、須藤元気が新たなプロデューサーに就任したことを発表した。

須藤はレスリングをバックボーンに持ち、現役時代から独創的な格闘スタイルで知られた人物。
今後はファウンダーの桜庭とともに、QUINTETの世界展開を進めていく。

2026年7月11日と12日には、横浜武道館で「Amateur QUINTET 2026 in YOKOHAMA」が開催される。
さらに7月25日には、京都の旧武徳殿で「QUINTET.6」の開催が発表されている。
出場選手などの詳細は今後発表される。

トップ選手によるプロ大会だけでなく、アマチュア選手が5人制のチーム戦を経験できる大会も復活する。

寝技を団体競技に変えたQUINTET

QUINTETは、単に柔術の試合を5人分並べた大会ではない。

勝者が残る。
引き分けなら両者が消える。
チームの総体重を考えながらメンバーを選び、出場順を決める。
選手は自分の勝利だけでなく、次に戦う仲間のことまで考えなければならない。

寝技を知らない観客にも状況が伝わりやすく、詳しいファンにはチーム編成や技術の違いを楽しめる。

桜庭和志が生み出したQUINTETは、個人戦を中心としてきたグラップリングに、団体戦ならではの戦略とドラマを加えたイベントなのである。

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