なぜ今時間無制限バーリトゥードなのか ROMANが問い直す"格闘技の原点"

日本の格闘技シーンに、異色の団体。
その名は「ROMAN」。
正式には、Roots Of Martial Arts Networkの頭文字を取った「R.O.M.A.N.」を掲げる団体だ。
2024年に発足した新興団体だが、掲げているテーマは大きい。
目指しているのは、「日本に再び格闘技の本流を取り戻す」こと。
単に新しいMMAイベントを作るのではなく、道着MMA、新柔術、時間無制限バーリトゥードという独自の競技を通じて、格闘技そのものの原点を問い直そうとしている。
設立の背景
ROMAN設立の背景は、かなりユニークだ。
きっかけは、代表の渡辺直由氏が沖縄・石垣島で行っていた柔術サークルだった。
そこで住吉優氏から「石垣島で何か小さな大会をやらないか」と声をかけられたことを機に、渡辺氏が以前から頭の中で温めていたルール構想が再び動き出した。
もともとは「誰かがやってくれないか」と考えていたものだったが、住吉氏というパートナーを得たことで、渡辺氏自身が弘中邦佳氏や中井祐樹氏のもとを訪ね、コンセプトを説明。
そこからROMANの実現へとつながっていった。
中心人物の顔ぶれ
中心人物の顔ぶれを見ると、柔術・修斗・MMAの実績を持つ人材が運営に関わっていることが分かる。
代表取締役CEOのNAOYOSHIこと渡辺直由氏は、日本の柔術黎明期から活動し、2004年には早川光由氏とともにトライフォースを設立した人物。
取締役COOの住吉優氏は、企業経営の経験を持ちながらブラジリアン柔術にも取り組む人物で、団体運営面を支える存在だ。
さらに、実行委員会代表には元UFCファイターで元修斗世界王者の弘中邦佳氏、名誉顧問には日本ブラジリアン柔術連盟会長であり、日本修斗協会会長でもある中井祐樹氏が名を連ねている。
原点回帰という思想
つまりROMANは、柔術、修斗、MMAの流れを知る人間たちが、現代の格闘技にもう一度"原点回帰"を持ち込もうとしている団体だ。
現在のMMAは、ルールが整備され、競技として成熟した。
その一方で、かつてのバーリトゥード的な「何が本当に強いのか」という荒々しい問いは、見えにくくなっている。
ROMANはそこに対して、単に昔の危険なルールを復活させるのではなく、現代の医学、安全管理、競技理解の中で、どこまで格闘技の自由度を戻せるのかを試している。
ROMAN側は、現代MMAの技術が積み上がった今だからこそ、制約を取り払った先にどのような進化があるのかを見たい、という考えを示している。
3つの競技
ROMANが展開する競技は大きく3つある。
ひとつ目は、道着を着用して行うMMA。
MMAユニファイド・ルールを基本にしながら、柔術着や柔道着のようなジャケットを着て戦うことで、通常のMMAにはない襟、袖、道着を使った組み技の攻防が生まれる。
ROMANはこの道着MMAについて、世界共通ルールの確立を目標に掲げている。
ふたつ目は、新柔術ルールだ。
これはブラジリアン柔術をベースにしながら、外掛け、ヒールフック、スラミングなどを解禁するもの。
プロ柔術ではポイント制ではなく、ジャッジ3名の判定で勝敗を決める形式が採用されている。
従来の柔術よりも、より実戦的で攻撃的な展開を促すルールと言える。
そして最もROMANらしいのが、R.O.M.A. Rulesと呼ばれる時間無制限バーリトゥードだ。
ROMAN側はこれを単なる競技ではなく"決闘"として位置づけている。
目潰し、噛みつき、粘膜に深く指を入れる行為など、観賞に耐えない行為は禁止される一方で、現代社会で許される範囲内で、できる限り制限を取り払った戦いを目指している。
また、過激さを売りにした一過性のイベントと混同されないよう、出場選手には煽り合いやトラッシュトークを禁じる姿勢も示している。
面白さと危うさ
この点がROMANの面白さでもあり、危うさでもある。
医師の監修や安全管理を前提にしながら、頭突きや金的なども含む自由度の高いルールは、当然ながら批判や安全面の議論を呼びやすい。
ただしROMANは、無秩序な暴力を見せたいのではなく、格闘技がどこまで競技化され、どこから本来の"決闘性"を失うのかを探っている。
実行委員会には医師や弁護士も名を連ねており、医学的・法的な観点も含めてルールを組み立てようとしている点は、単なる過激イベントとは異なる部分だ。
大会の歩み
大会としては、2024年7月に「ROMAN ZERO」が沖縄県糸満市で行われ、その後、2024年10月に旗揚げ大会「ROMAN ONE」が開催された。
ROMAN ZEROは、10月の旗揚げ戦に向けたルール検証や可能性を探る場として位置づけられていた。
そこから継続的に大会を重ね、2026年にはROMAN4、ROMAN5、ROMAN6、2027年にはROMAN7の開催が予定として発表されている。
ROMANという存在
ROMANは、UFCやRIZINのようなメジャーMMA団体とは、かなり異なる方向を向いている。
完成されたスポーツとしてのMMAを追いかけるのではなく、道着、柔術、バーリトゥード、武道、決闘性といった要素を現代に再接続しようとしている団体だ。
だからこそ、評価は分かれるかもしれない。
安全性への懸念もある。
だが、格闘技が競技として洗練されていく中で、「そもそも格闘技とは何なのか」という問いを真正面から掲げている点で、ROMANは今の日本格闘技界の中でもかなり独自の存在と言える。
ROMANはまだ新しい団体だ。
だが、その背景には柔術黎明期、修斗、MMA、武道の流れを知る人たちの魂がある。
ROMANは、格闘技の歴史を踏まえた上で、もう一度"原点"を現代に持ち込もうとしている。


