「格闘技の煽り」では済まされない 平本蓮への威圧投稿が越えた一線

2026年6月4日、Xで「懲役社長」として活動する草間清隆氏が、RIZINファイターの平本蓮を名指しした投稿を行った。
投稿では、平本が元チームメイトの赤田功輝に食事やサウナを奢ったこと、金銭に関する話題などに触れたうえで、平本の私生活や「薬事情」を暴露すると示唆。
最後には「ちょっかい出すならお前マジで泣かすぞ」と書き込んだ。
投稿は急速に拡散され、X上では「脅迫的だ」「第三者が介入する内容ではない」といった批判が相次いでいる。
赤田功輝を擁護するための投稿
今回の背景にあるのは、平本が率いていた「BLACK ROSE」と赤田功輝の関係だ。
赤田は平本の朝倉未来戦に向けたスパーリングパートナーを務め、平本のプロデュース選手としてMMAデビュー。
その後はBLACK ROSEを離れ、2025年7月のBreakingDown16に参戦した。
現在も平本との関係や脱退時の経緯が、たびたび格闘技ファンの間で話題となっている。
懲役社長の投稿は、赤田を擁護し、平本に対してこれ以上の言動を控えるよう圧力をかける意図があったとみられる。
しかし、赤田本人はこの投稿に対し、
「お気持ち嬉しいです。でも大丈夫ですよ」と返信している。
少なくとも赤田自身は、第三者によるさらなる介入や対立の激化を求めているようには見えない。
「応援」と「威圧」はまったく別のもの
誰かを応援すること自体に問題はない。
赤田の立場に共感し、平本側の発言や態度に疑問を持つことも個人の自由だ。
しかし、応援する選手のためであれば、相手の私生活を暴露すると示唆したり、「泣かすぞ」と威圧したりしても許されるわけではない。
意見があるなら、事実と論理によって主張すればいい。
赤田がどのような扱いを受けたと考えているのか。
平本のどの発言が不適切だったのか。
金銭をめぐって何が問題になっているのか。
公に批判するのであれば、具体的な論点を示して説明するべきだった。
ところが今回の投稿は、問題を整理するのではなく、相手が嫌がる情報の暴露をほのめかし、力を背景に黙らせようとしているように受け取られかねない内容だった。
それは擁護ではない。
単なる威圧である。
根拠の示されていない「薬事情」を持ち出す危険性
特に問題なのが、平本の「薬事情を暴露する」と書いた部分だ。
投稿では、具体的に何を指しているのか、裏付けとなる証拠があるのかは一切示されていない。
平本はドーピングに関する話題が過去にあったが、そちらについては問題がなかったと検査結果が公表されている。
真偽不明のまま薬物を連想させる言葉だけが拡散されれば、対象者の社会的評価に大きな影響を与える。
確かな根拠がないのであれば、著名選手の名前と「薬」という言葉を結び付けること自体が極めて無責任である。
どちらに転んでも、今回の書き方が適切だったとは言い難い。
「格闘家なら分かる」という理屈も通用しない
投稿には、「平本君も格闘家ならわかると思うけど」という一文もあった。
しかし、格闘家であることと、公の場で威圧的な言葉を受け入れなければならないことは無関係だ。
格闘技はルール、契約、レフェリー、競技団体の管理によって成立している。
リングやケージの中で拳を交えることと、私生活の暴露を示唆して相手に圧力をかけることは、まったく別の行為である。
「格闘家だから」「格闘技界だから」という理由で、リング外の威嚇までエンターテインメントとして消費する風潮は、業界にとって決して健全ではない。
法的評価は専門家や捜査機関が判断すること
今回の投稿が刑法上の脅迫罪などに該当するかは、言葉だけで即断できるものではない。
投稿に至った経緯、当事者間の関係、表現の具体性などを踏まえ、最終的には捜査機関や司法が判断することになる。
Xのポストもルールに違反しているという理由で削除されていた。
刑法第222条では、人の生命、身体、自由、名誉または財産に害を加える旨を告知して脅迫した場合について定められている。
「暴露する」という表現や「泣かすぞ」という言葉が、具体的な状況の中でどう評価されるかは慎重に考える必要がある。
しかし刑事事件として成立するかどうかと、社会的に許容される発言かどうかは別問題だ。
犯罪に当たらなければ何を書いても良い、という話にはならないと思う。
格闘技界に必要なのは対立の拡大ではない
平本と赤田の関係に何があったのかは、最終的には当事者にしか分からない部分も多い。
平本の言動に問題があると考える人もいれば、赤田の脱退の仕方に疑問を持つ人もいるだろう。
格闘技ファンが、それぞれの立場から意見を述べることまで否定する必要はない。
しかし、そこに影響力や資金力を持つ第三者が入り込み、私生活の暴露や実力行使を連想させる言葉で一方を威圧すれば、問題は別の段階へ進んでしまう。
格闘技界では、選手同士の挑発や因縁が試合への期待を高めることがある。
一方で、今回のような発信まで「宣戦布告」「リング外のバトル」と面白がることには危うさがある。
過激な投稿が注目を集めれば、さらに強い言葉を使う人物が現れる。
やがて選手本人だけでなく、家族や関係者、スポンサーまで巻き込まれる可能性もある。
これは格闘技の盛り上がりではない。
業界の信頼を損なう行為だ。
「絶望から希望へ」を掲げる人物だからこそ
草間氏は、自身の服役経験や出所後の事業活動をまとめた書籍『懲役社長―絶望から希望へ―』の著者でもある。
同書は、8年間の収監生活を経て、出所後に事業を進めていく物語として紹介されている。
過去を公表し、再出発や希望を語ることには大きな意味がある。
だからこそ、社会的な影響力を持つようになった現在、求められるのは威圧的な言葉ではなく、冷静な対話ではないだろうか。
誰かを守りたいという気持ちが本物だったとしても、その手段が相手への脅しに見えるものであれば、結果的に守ろうとした人物の印象まで悪化させる。
今回の投稿で問われているのは、平本と赤田のどちらが正しいかだけではない。
影響力を持つ社会人が、公の場でどのような言葉を選ぶべきなのかという問題である。
少なくとも、私生活の暴露をほのめかし、「泣かすぞ」と相手を威圧する行為を、格闘技界のエンターテインメントとして受け入れるべきではないと私は思う。
