ONE SAMURAI 1直前① 前半5試合が映す日本勢の現在地

2026年4月29日、東京・有明アリーナで「ONE SAMURAI 1」が開催される。
ONE Championshipにとって、日本大会シリーズの幕開けとなる記念すべき第1回大会だ。
U-NEXTでは13時15分から独占ライブ配信、フジテレビ系列では22時からディレイ放送が予定されている。
全15試合が並ぶ今大会は、武尊 vs ロッタン・ジットムアンノンのメインイベントだけを見ればいい大会ではない。
ONE公式のファイトカードを見ると、MMA、キックボクシング、ムエタイがバランスよく組まれ、前半戦から日本人選手同士の対決、若手の挑戦、実績者の再証明、世界の注目株との対戦が並んでいる。
大会前半にあたる第1試合から第5試合は、いわば「ONE SAMURAI 1」という新シリーズの第一印象を決めるゾーンだ。
まだ世界タイトルマッチは登場しない。
しかし、こうした序盤のカードこそ、会場の温度を上げ、大会全体の流れを作る。
ビッグネームのための助走ではなく、ここからすでに物語は始まっている。
第1試合 永井奏多 vs 神部篤坊 若さと勢い、日本MMAの次世代を占うオープニングマッチ
第1試合は、永井奏多 vs 神部篤坊のバンタム級MMA。
大会の幕開けを任されるのは、日本人同士のMMA対決だ。
ONE公式プロフィールによれば、永井は21歳、TRIBE TOKYO MMA所属。
対する神部は26歳、ABLAZE Hachioji所属のファイターとして紹介されている。
このカードの面白さは、単なる日本人対決ではなく、これからONEの舞台で名前を広げていく可能性を持つ選手同士が、記念すべき第1試合に置かれている点にある。
永井は21歳という若さが大きな魅力だ。
この年齢でONEの日本大会に出場するということ自体、今後への期待を感じさせる。
MMAは経験値が重要な競技だが、若い選手が大舞台で一気に評価を変えることもある。
第1試合で印象的な勝ち方をすれば、今後のONE日本大会に継続して呼ばれる存在になる可能性もある。
神部は2025年にPANCRASEで3連続フィニッシュ勝利を挙げており、勢いを持ってONEの舞台に乗り込む。
この試合で見たいのは、最初の入り方だ。
大きな大会の第1試合は、選手にとっても難しい。
会場がまだ温まりきっていない中で、自分たちの試合で空気を変えなければならない。
慎重に入るのか、それとも最初から仕掛けるのか。
永井の若さと神部の勢いがぶつかれば、序盤から会場を一気に引き込む可能性がある。
ONE SAMURAI 1の最初の勝者になる。
それだけで、この試合には意味がある。
第2試合 陽勇 vs 内藤大樹 勢いの陽勇か、経験の内藤か フライ級キックの日本人対決
第2試合は、陽勇 vs 内藤大樹のフライ級キックボクシング。
ここは前半戦の中でも、かなり分かりやすい構図を持つカードだ。
陽勇は、ONE公式プロフィールで大阪の空手道場から格闘技人生を始めた選手として紹介されている。
8歳で空手を始め、フルコンタクト空手で実績を積み、19歳でプロキックボクシングへ転向。
ONEでは5戦全勝、うち4フィニッシュを記録している若手ストライカーだ。
対する内藤大樹は、元シュートボクシング日本スーパーバンタム級王者。
ONE公式プロフィールでは、幼少期に空手を始め、14歳でキックボクシングジムに入門し、高校1年でプロデビュー、18歳でシュートボクシング日本王者になった選手として紹介されている。
つまりこの試合は、今まさに伸びている陽勇と、長くトップレベルで戦ってきた内藤という構図になる。
陽勇の魅力は、空手ベースの独特なリズムと、近年見せているフィニッシュ力だ。
蹴りの角度、距離の作り方、相手のタイミングを外す動き。
単純なキックボクシングの型には収まらない怖さがある。
一方で、内藤にはキャリアの厚みがある。
若い相手の勢いをそのまま受けるのではなく、距離をずらし、タイミングを外し、試合の流れを落ち着かせることができるか。
経験値で陽勇の爆発力を封じられるかがポイントになる。
第2試合にこのカードがあることで、前半戦は一気に締まる。
若手の台頭なのか。
ベテランの意地なのか。
大会序盤から、日本のフライ級キックボクシングの現在地を見せる試合になる。
第3試合 黒田斗真 vs 田丸辰 元K-1王者とRISEの実力者 日本キック界の交差点
第3試合は、黒田斗真 vs 田丸辰のキックボクシング(ONE公式はストロー級、一部メディアではアトム級表記)。
ここは前半戦の中でも、キックボクシングファンにとってかなり興味深い一戦だ。
田丸辰はRISEで頂点を極めた選手であり、元K-1王者の黒田斗真と対戦する。
田丸は2024年9月の志朗戦以来のキックボクシング復帰戦として、このONE SAMURAI 1に臨む。
この試合は、単に「日本人同士のキック」というだけではない。
K-1、RISEという国内キック界の流れを背負ってきた選手たちが、ONEという国際的な舞台で交わる試合でもある。
黒田にとっては、ONEの舞台で自分の価値を再提示する試合になる。
国内での実績がある選手でも、ONEのルール、採点、空気の中で同じように強さを見せられるかは別問題だ。
だからこそ、ここで田丸を相手に勝つ意味は大きい。
田丸にとっても、この試合は重要だ。
復帰戦でいきなり黒田という実績者と戦う。
しかもONE SAMURAI 1という大きな日本大会での一戦だ。
勝てば、国内キックファンだけでなく、ONEの視聴者にも自分の名前を強く印象づけられる。
見どころは、距離の主導権をどちらが握るか。
ストロー級らしいスピードの中で、先にリズムを作った方が優位に立つ。
黒田がプレッシャーをかけるのか、田丸がスピードとタイミングで上回るのか。
細かいフェイント、ローキック、左の差し合い、出入りの速さ。
派手なKOだけでなく、技術の密度を楽しめるカードだ。
第3試合にして、すでに"通好み"の日本人対決が組まれている。
この層の厚さこそ、ONE SAMURAI 1の前半戦の魅力だ。
第4試合 吉成士門 vs ジョハン・ガザリ 日本の士門が、世界の若きスター候補に挑む
第4試合は、吉成士門 vs ジョハン・ガザリのフライ級ムエタイ。
前半戦の中で、もっとも国際色が強く、もっとも空気を変える可能性があるカードだ。
ジョハン・ガザリは、ONE公式プロフィールでマレーシアとアメリカにルーツを持つ19歳のムエタイファイターとして紹介されている。
両親もムエタイ選手で、10歳から競技を始め、ONE Friday Fightsで4連勝して10万ドル契約を獲得した若き注目株だ。
士門もONEで結果を残している日本ムエタイの実力者だが、ガザリは知名度と爆発力を持つ相手だ。
勝てば世界的な評価をさらに高められる。
ONE公式の記事でも、士門はガザリ戦について「心身ともにバッチリ」と語り、対策を進めてきたことを明かしている。
また、ONE SAMURAI 1という大舞台で「印象を残せるような試合にしたい」と話している。
この試合で重要なのは、士門がガザリの圧力に飲まれないことだ。
ムエタイは、キックボクシング以上に一瞬で流れが変わる。
ヒジ、ヒザ、首相撲、近距離の攻防。
打ち合いになれば会場は沸くが、そこで雑になればガザリの土俵になる可能性もある。
士門が冷静に距離を作り、攻撃の入り口を潰せるのか。
それともガザリが若さと勢いで前に出て、試合を乱戦に持ち込むのか。
この第4試合は、前半戦の中で最も"世界に見つかる"可能性があるカードだ。
勝った選手は、ONEのフライ級ムエタイ戦線で次の注目株として扱われてもおかしくない。
第5試合 山北渓人 vs 黒澤亮平 前半戦の締めは、ストロー級MMAの実力者対決
第5試合は、山北渓人 vs 黒澤亮平のストロー級MMA。
前半戦の締めに置かれたこのカードは、日本人MMAファンにとってかなり重要な一戦だ。
山北渓人は、ONE公式プロフィールで三重県いなべ市出身、レスリングをルーツに持ち、パンクラスでストロー級王者になった選手として紹介されている。
ONE参戦時にはMMA無敗の7勝0敗だったことも記されており、現在もONEストロー級戦線で上を狙う存在だ。
一方の黒澤亮平は、日本MMA界で長く実績を積んできたストロー級ファイターだ。
ONE公式プロフィールでは、2016年に修斗世界ストロー級王座、2024年にキング・オブ・パンクラシストとなり、ONEデビュー戦で判定勝利を収めた後、ボカン・マスンヤネには判定負け。
山北戦は再浮上を懸けた一戦にもなる。
この試合は、かなり濃い。
山北はレスリングを軸に、組み、スクランブル、トップコントロールで相手を削っていくタイプ。
対する黒澤は、打撃、グラップリング対応、試合運びのバランスが高い総合型のファイターだ。
山北が組みでペースを作るのか。
黒澤が距離と展開をコントロールして、山北の得意な形を外すのか。
ケージ際の差し合い、テイクダウン後の立ち上がり、バックの取り合い、細かいポジションの奪い合い。
派手な打撃戦とは違うが、MMAの面白さが詰まった試合になる。
そしてこのカードには、もう一つ大きな意味がある。
世界タイトルマッチが並ぶ後半戦の前に、日本人MMAの実力者同士がしっかり大会を引き締める役割を担っているということだ。
前半戦の最後にこの試合があることで、ONE SAMURAI 1は単なるキック中心の大会ではなく、MMAでも日本勢の層を見せる大会になる。
前半戦から、すでに"次の主役"が見えてくる
ONE SAMURAI 1の前半戦は、ビッグネームの影に隠れがちなカードに見えるかもしれない。
だが、よく見ればかなり意味のある5試合が並んでいる。
第1試合では、永井奏多と神部篤坊が日本MMAの次世代を懸けて大会の幕を開ける。
第2試合では、陽勇と内藤大樹がフライ級キックの勢いと経験をぶつけ合う。
第3試合では、黒田斗真と田丸辰が日本キック界の実績をONEの舞台で交差させる。
第4試合では、吉成士門が世界の若き注目株ジョハン・ガザリに挑む。
第5試合では、山北渓人と黒澤亮平がストロー級MMAの実力者対決で前半戦を締める。
つまり、前半戦は単なる"前座"ではない。
ONE SAMURAI 1という新シリーズが、日本の選手たちをどのように世界へつなげていくのか。
その方向性が見える5試合だ。
武尊のラストマッチ、若松佑弥の防衛戦、吉成名高の世界戦、与座優貴のタイトル挑戦。
後半には大きな物語が待っている。
しかし、その前にある第1試合から第5試合にも、それぞれの選手にとっての大勝負がある。
ここで勝ち方を見せた選手が、次のONE日本大会でより大きなカードに抜擢されるかもしれない。
ONE SAMURAI 1は、メインイベントだけの大会ではない。
そのことを最初に証明するのが、この前半戦の5試合だ。
この記事をシェア

