RIZINが福岡で売るもの 体験型興行の設計

4月12日に開催される「RIZIN LANDMARK 13 in FUKUOKA」は、フェザー級とバンタム級、二大タイトルマッチを軸にした大会だ。
だが、公式情報を追っていくと、RIZINが今回福岡で売っているのは、A館の観戦チケット1枚だけではないことがよくわかる。
公開計量、前夜祭、B館での格闘技EXPO、パブリックビューイング、グッズ販売、体験会、そしてPPV配信まで、観客との接点が何層にも設計されている。
少なくとも今回の福岡大会では、RIZINが興行を「会場で観るもの」から「街と配信を含めて参加するもの」へ広げようとしている設計が、はっきり見える。
チケット完売後の導線
象徴的なのは、完売後の公式案内の作り方だ。
RIZINは3月31日の更新で、会場観戦チケット完売後の観戦方法として、パブリックビューイングとPPVを公式が案内した。
PPVはRIZIN 100 CLUB、RIZIN LIVE、ABEMA、U-NEXT、スカパー!の5媒体で販売され、前売りは4月11日23時59分まで。
つまり「会場に入れないなら終わり」ではなく、「見方を切り替えてまだ参加できる」形を公式が最初から用意している。
ここに、チケット販売で終わらない収益設計が見える。
前日から始まる体験設計
しかもRIZINは、その導線を大会当日だけに閉じていない。
4月11日には福岡市役所西側ふれあい広場で公開計量を実施し、観覧は無料。
さらにその模様はYouTubeでもライブ配信される。
同じ4月11日の夜には、福岡市内で事前申込・抽選制の前夜祭も開催され、一般参加枠に加え、ファンクラブ会員向けの特典枠も用意された。
開催場所は当選者のみに通知される形だ。
公開計量で街中に人を集め、前夜祭でファンコミュニティを温め、翌日の本興行へつなぐ。
この流れは、単発イベントというより、都市滞在型の週末コンテンツに近い。
B館がもうひとつの会場になった
その設計が最もわかりやすく表れているのが、マリンメッセ福岡B館の使い方だ。
4月12日のB館では「格闘技EXPO in FUKUOKA」が9時開場で始まり、わんぱく格闘技体験会、見どころトークショー、じゃんけん大会、リングステージの自由開放などが並ぶ。
パブリックビューイングは12時開場・14時開始で、伊澤星花、伊藤裕樹、YA-MAN、武田光司、冨澤大智、元谷友貴、宇佐美正パトリックらが参加予定。
解説付きで大会を楽しめる構成になっている。
B館は単なる待機場所ではなく、A館と並ぶ“もうひとつの会場”として機能しているように見える。
観客を参加者に変える仕掛け
面白いのは、そのB館が「観る」だけの場所ではないことだ。
小学生以下限定のわんぱく格闘技体験会は参加費無料で、元RIZINファイターから格闘技の楽しさを学べる内容になっている。
大会直前の見どころトークショーでは現役ファイターが勝敗予想を語り、じゃんけん大会では出場選手のサイン入りポスター、シェイドゥラエフ&久保優太の直筆サイン入りポスター、伊澤星花の直筆サイン入りのぼり、ダニー・サバテロ&後藤丈治の直筆サイン入りチェキセットなどが景品として用意された。
RIZINはここで、観客をただの受け手にせず、参加者に変えている。
観る、遊ぶ、交流する、思い出を持ち帰る。
その全部が同じ日の導線に入っている。
チケットがなくても買える物販
物販の置き方も同じ発想だ。
B館エントランスでは9時から、A館エントランスでは12時からグッズ販売が始まり、いずれもチケットがなくても購入できる。
A館では大会限定グッズやファイターとのコラボアイテムが並ぶ。
さらに事前にはオンラインでの先行予約販売も実施されていた。
つまりRIZINは、観戦チケットを持つ人にだけ物販機会を与えるのではなく、「会場外の人」「B館だけ来る人」「配信視聴者」まで含めた買い方を作っている。
グッズが観戦の付属品ではなく、独立した参加窓口になっているのだ。
RIZINが福岡で売っているものの正体
ここから見えてくるのは、RIZINが福岡で売っているものの正体だ。
それは一夜限りの勝敗ではなく、「RIZINのある週末に参加すること」そのものだろう。
会場観戦者にはA館、A館チケットを取れなかった層にはB館、遠方や在宅の層にはPPV、街を歩く人には公開計量、コアファンには前夜祭、家族連れには体験会、物販目的の層にはチケット不要の販売ブースがある。
入口を増やし、どこから入ってもRIZINの経済圏に触れられるようにしている。
これは格闘技団体の興行というより、スポーツエンタメの立体的な接点設計に近い。
RIZINはこれまでも大会そのものの熱量で注目を集めてきたが、福岡大会でよりはっきりしたのは、「満員の会場」をゴールにしていないということだ。
むしろ満員になったその先で、どうやって熱を街に広げ、B館に移し、配信に乗せ、グッズとコミュニティに変えていくかまで考えている。
福岡でRIZINが売っているのは、もはやA館の座席だけではない。
大会前日から当日までを丸ごと包んだ、“参加できるRIZIN体験”そのものだ。
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